62. 自己実現している人は、一人の時間を楽しんでいる (『愛されなかった時どう生きるか』)

『愛されなかった時どう生きるか』より

小さい頃から、自分の願いや要求が嘲笑されたり、無視されたりすることなく、まともに対応されて育った人、つまり母親から愛されて育った人は、自然と強さを身につけている。しかしそうてない人、愛されなかった人ほ、その強さを自ら戦いとっていがなければならないのである。
 
そのために必要なことが自己実現している人と一緒になるということである。学生時代が終ると本当の友人はできない、などという言葉を信じてはいけない。社会人になってからだって親密な友人はできる。
 
親が与えてくれなかったものを、自己実現した人は与えてくれる。人間の心の成長に欠くことのできない愛は、自己実現した人によってしかもたらされない。
 
しかし多くの愛されなかった人は、神経症タイプの人間から神経症タイプの人間へとわたりあるいてしまう。そして、「人にとりいろうとする動機」に支配されて奴隷のように生きたり、或いは他人の願いを踏みにじる支配的な人間として生きてしまう。
 
では自己実現型人間と、神経症型人間とをどこで見分けたらよいか。
 
自己実現している人は、まず自分一人でいる時間を楽しんでいる。一人でいる時間が充実しているか充実していないか、ということがこの二つのタイプを見分けるポイントであろう。
 
どこで見たか忘れたが街の看板に、一人で生きられる人が二人で生きられる、という文句があった。何か女性ものの宣伝をしていたように思う。たしかにこのとおりである。一人で生きられる人が、二人で生きられるのである。

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