9. 心の底で望んでいるものに気づこう(『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』)

『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』より

不機嫌な人、いわれなき罪悪感に苦しんでいる人、自分におびえている人、何か自分の存在は許されないと感じている人、それらの人は、自分が何を望んでいるか分からなくなっている。自分が心の底の底で望んでいるものは何なのか、自分が必要としているものは何なのか、それが本人に分からないということが問題なのである。

それらの人が心の底で望んでいるもの、それは「やさしさ」なのである。ところが、それらの人は、自分を守ることばかりに気を奪われていて、自分の望むものに気付こうとはしない。

甘えを満たされていないあなたは、実際には自己中心的でわがままなのである。あなたはそれを認める必要がある。自己中心的でわがままな自分をどんなに抑え、それからどんなに眼をそむけても、不快感から逃れることはできない。それらを抑えてみても、それらはどこかでかたちを変えて出てくる。たとえば、他人の不幸を心のどこかで喜ぶ、自分の憎しみに正義の仮面をつけさせて他人を苦しめる、そんな歪んだあらわれ方をする。

自分の望んでいるものに、勇気を持って気づくことである。もっと正確に言えば、自分が直接に望んでいることに気づくことである。神経症的な人は、自分が直接に望んでいることに気づかない。自分が必要としているものが分からなくなっているのである。