10. 相手を“冷たい”という人の心理(『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』)

『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』より

甘えの欲求を強く残した依存的男性が恋愛をしたとする。いや恋愛というほどかかわらないとしてもいい。ただお互いに好意を持ったという程度でいい。この依存的な男性は親しくなるにつれて、自分のわがままを出すようになってくる。

そんな時必ずしも相手の女性は、そのわがままを受け入れないとする。そんな時その依存性の強い男性は、「おまえは冷たい」ということがある。この男性は、その女性が自分の言いなりにならないから、「おまえは素直ではない」と言っているのである。

この女性はもしかしたら「しっかりしている」表現すべき人かもしれない。この男性とは全く別の立場の人がこの女性を評価したら、「おまえは素直じゃない」ではなく「きみはしっかりしている」となるかもしれない。ところがこの男性からすれば、その「しっかりしている」点が、その女性の冷たさと感じるのである。最も典型的な例は、男性が女性に肉体を求める場合である。女性は相手の愛を信じられなくて、それを拒否したとする。すると、この依存性の強い男性は、この女性を「冷たい」と言い出す。

なぜ「冷たい」と言うのか。それは相手の女性が、自分の甘えの欲求を満足させるように行動しないからである。しかし、男性から「冷たい」と言われれば、女性はやはりそれなりに傷つく。しかも、次々に男性があらわれて、同じようなことで「お前は冷たい」と言えば、その女性はその女性も「私って冷たいのかしら」と思い出すかも知れない。その女性は「自分は自分を大切にしているだけだ」と思いつづけるのは、かなりむずかしい。「私は男性の欲望の奴隷ではない」と主張しつづけるのもむずかしくなる。