5. 心の底の絶望感が顔を通して表れる(「ねばり」と「もろさ」の心理学)

『「ねばり」と「もろさ」の心理学―逆境に強い人、弱い人』より

人が暗い顔をするのは自分の価値を感じられない時ではなかろうか。人は自分の価値を感じることに失敗した時、ふと暗い顔をする。あるいは自分の中に力を感じることに失敗した時に、ふと暗い顔をする。

自分の心の底にある絶望感がその人の顔を通して表れるのではなかろうか。自信のなさがその失敗を通して表れる。心の底の暗さがふと顔をのぞかせる。自分への失望感から眼を背けている人がいる。自分への失望感を抑圧している人である。

その様な人は何とかして自分の価値を感じようと必死である。それにもかかわらずそのことに失敗する。その時人は自分の心の底にある絶望感と直面する。人知れず暗い顔をするのはその時である。自分の反応が何の効果もないことを知って絶望感を深めていく。「Responses don't matter」。これが絶望感、自分への失望感を深めていく。

対人恐怖症の人が人前で理想的な人間を演じようとするのは、そうしなければ心の底の絶望感と直面しなければならないからである。それだけに必死で理想の自我像に固執する。しかし残念ながら「Responses donユt matter」で理想の自我を演じることに失敗する。そしてやはりふと暗い顔をする。

必死で明るい人を演じる人も同じである。心の底が暗ければ暗いほど逆に明るく振舞うことでその暗さと直面することを避けようとする。その人が見せる「ふとした暗い顔」、それは必死の戦いに敗れたことを表現している

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