旅人と枯れ木の根っこ

旅人たちが海岸を歩いていって、見はらしのきく丘の上に出ました。遠くに枯れ木の根っこが浮いているのを見て、大きな船だとおもいました。そこでその船が岸につくまで待つことにしました。木の根っこが風にふかれて近づいてくると、大きな船ではなくて、小船だとおもいました。いよいよ打ちあげられてみると、それが木の根っこだったので、旅人たちはたがいに言いました
 
「なんだ、つまらない。船でもないものを待っていた。」
 
「あんな豪邸に住んでいて、」と人は羨ましがる。しかしそこに一人で孤独に住んでいる人は幸せとは言えない。当事者の場合と、遠くから見て、羨ましがっている人とは違う。
 
羨ましがる人はその豪邸を遠くから見ているので素晴しく見えるのである。遠くから見ている人は、その豪邸を大きな船だと思っている。しかし豪邸に住んでいる人の実体を少し知っている人はその豪邸をを大きな船ではなくて、小船だと知っている。
 そしてさらに近くに住んで良く知っている人は、その豪邸が木の根っこであることを知っている。