先生から誉められると安心した。

ある「勉強が出来ない子供」である。
 
小学校時代に「好き」と思っていた先生が居る。
 
その先生が担任の間はその子は、自分を抑えて無理に「良い子」であった。したくないのに、トイレをきれいに掃除した。洗面台も洗った。教室のカーテンをはずして家に持ち帰って洗った。
 
先生に怒られると思ったから教科書はいつもきれいにして
いた。鉛筆をそろえて削っていた。ノートがおれるのが怖かった。
 
先生に気に入られるためにバレーボールが嫌いなのにバレーのボールをきれいに拭いた。拭いた後に先生から「よくやった!」と言われるためだった。先生から誉められると安心した。休み時間もベルが鳴る5分前に早く席に戻っ
ていた。
 
先生が不機嫌になるのが怖かった。休み時間が終わる前に気になってくる。そして次々と先生を喜ばすことをしよ
うとした。
 
放課後鬼ごっこをして、その子は鬼になった。そのときにある子が先生の机の下に隠れた。しかし先生が「いない
わよ」と言うと、居ないということにして違うところに行った。 
 
そして先生はよく家に「遊びにいらっしゃい」と言った。その子は先生のところに行きたくないのに行った。「イ
ヤ」と言えなかった。いやな思いをすると分かっていても「行く」。先生が怒らないだろうと言う服を着ていく。
 
家に帰ってから親が「どうだった?」と聞く。すると「楽しかった」と答えてしまう。
 
夕方五時まで職員室で先生の手伝いをしていた。その子はなぜか不思議にその先生から離れられなかった。
 
そしてその子は自分が馬鹿だと思っていた。そして先生からもバカと思われていると思っていた。その子はなぜか
その先生が自分を救ってくれると思っていたという。
 
その子は、朝起きたときにはもう頭には学校がある。その子は「あのころは泣かなかった」と言う。宿題していて
も先生のことが頭に浮かぶ。
 
周囲の人は「こんなに学校が好きなのに、何で勉強出来ないのかしら」と言う。