メンヘラの精神構造

メンヘラの精神構造

〜傷つきやすい私を大事にしてほしい
日本独特の「メンヘラ」が生まれた背景を社会学者が解説〜

 最近、メンヘラ社員という言葉がある。メンヘラとはメンタルヘルスと言う言葉を略した言葉である。意味は心の病んだ社員ということである。

 心理的に問題を抱えた大人になっていくのには、大きくいえば二つの原因がある。
 一つは、人は成長のそれぞれの時期の心理的課題を解決することでしか生きられないのに、その時々の課題の解決から逃避してしまうことである。課題解決に立ち向かわない。
課題の解決を避けると依存症だの現実否認だの合理化だのという偽りの満足を求めることが始まる。
 不可避的な人生の課題を解決することは、自らの心の葛藤に直面することであり、困難と直面することであり、そこから生きている意味も満足も得られる。
 それなのに、その時期その時期の心理的課題の解決から逃げると、人生が次第に行き詰まっていく。
 その人の人生が心理的に行き詰まっている状態が、サディズムとか被害者意識等である。
 その表れ方は自己拡張型と自己消滅型とに別れる。この本では、どちらかというと自己消滅型の方に焦点を当てた。つまり被害者意識などの方に焦点を当てた。
 自己拡張型の方はパワー・ハラスメントなどで、サディズムを中心に次の著作で説明する予定である。

 心理的に問題を抱えた大人になっていく二つめの原因は、小さい頃から与えられる破壊的メッセージをどう解決するかということである。
 もちろん幸せにも、破壊的メッセージを与えられることなく、自立に向かって励まされ続けて成長した人も居る。

 逆に「お前は生きる価値がない」という破壊的メッセージを徹底的に与え続けられて成長した人も居る。
 これでもかこれでもかと執拗に襲った破壊的メッセージと命がけで戦う中で、人は自分の長所、自分の固有の素晴らしさに気がつく。
 この戦いから逃げて被害者意識に逃げ込むと、最高の自分、素晴らし自分に気がつくことなく,人生が行き詰まる。
 この破壊的メッセージは、第一の「それぞれの時期の人生の課題の解決」についても最大の障害となる。要するにそれぞれの時期の人生の課題の解決が解決出来ないことが多い。

 また成長の過程で、この心理的に未解決な問題を無意識に蓄積しながら、会社に入り、課長になろうが、部長になろうが、役員になろうが人間関係のトラブルを次々と起こす。

 基本的に、それぞれの時代の心理的課題を解決することなく成長してきてしまったが故に、次々に人間関係の問題を起こしてしまうのがメンヘラ社員である。
 自分に破壊的メッセージを与えた人と戦わないで、自己否定的な自己イメージのままで生きているのが、メンヘラ社員である。

  地獄には現実の地獄と、内面の地獄とある。
 カレン・ホルナイは「自己蔑視は内面の地獄」と言って居る。「註、Karen Horney, Neurosis and Human Growth, W.W.NORTON & COMPANY, 1950. P.39」
 これが「メンヘラの精神構造」である。外側の環境は決して地獄ではないが、いやむしろ恵まれているが、心が地獄にいる。

 メンヘラ社員の心理について、今までの心理学の説明で言えば、社会的不能症である。
 社会的不能症とはピーターパン症候群の著者ダン・カイリーの言葉である。つまり「メンヘラの精神構造」とは、今まで使い慣らされてきた言葉で言えば、女性も含めたピーターパン症候群である。
 幼児から青少年期を経て大人になっているのだが、社会的には役に立たない。
 メンヘラ社員は、会社側からすれば、採用を間違ったと思って居る。
 客観的には採用は間違っているのだろうが、メンヘラ社員の側からすれば、皆に不当にこき使われていると思って被害者意識を持っている。
 なぜこういうことが起きるのか?そのことについてこの本では考えた。

出版社: PHP研究所 (2020/6/17) PHP新書
ISBN-10: 4569847153
ISBN-13: 978-4569847153

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