44. 劣等感から求めてしまう理想の自我(『まじめさが報われるための心理学』)

『まじめさが報われるための心理学』より

外化の間題を考えるときにやはり最も重大なのは、はじめに述べた理想の自我像である。
 
理想の自我像に執着するというといかにも向上心が強いように間こえるが決してそうではない。単に心理的成長に失敗しているということに過ぎない。つまり小さいころ自分の周囲にいた重要人物に自己同一化して以来、他の人から何も学べないでいるということである。
 
[理想の自我像]とは、小さいころ自分の周囲にいた神経症的重要人物の要求を心の中に取り込んでしまったということにすぎない。[理想の自我像]は権威主義的な父親への同一化によって生じる。
 
だから理想の自我像に執着する人は皆権威主義者である。理想の自我像に執着することの裏返しは、劣った人への蔑視である。心理的に成長して理想を求める人は、これ以後に書かれているような心理的特徴を示さない。つまりいらいらしたり、相手に迎合したり、体が悪くないのに頭痛に苦しんだりはしない。
 
とにかく理想の自我像を追い求めることは恐ろしい。心理的破滅に向かってつき進むことである。心理的に強いものは決して理想の自我像に固執などしない。
 
理想を求めることそのこと自体が悪いというのではない。その動機が間題であると言っているのである。自分に微笑めばほとんどのことは解決してしまう。

前のページ <著作からの抜粋> トップページ 次のページ