31. 不機嫌は内向して出口を失った怒りの感情(『まじめさが報われるための心理学』)

『まじめさが報われるための心理学』より

ラジオのテレフォン人生相談のパーソナリティーをしていて感じることの一つは、夫の内面の悪さに苦しめられる奥さんの多さである。内面の悪さといっても、単に家に帰って来ると愛想が悪いというような性質のものではない。家でいつもぶすっと黙っているというのではない。家にいることを楽しめない、逆に家にいることが不愉快である、家にいると気持ちが重苦しい、家にいると気持ちが塞がれる、家にいると不安と怒りがいり交じった不機嫌になる、そんな内面の悪さである。(中略)
 
そのような夫は、実は軽症の女性恐怖症なのである。彼は近親相姦的固着の病理に苦しめられている。深刻な不機嫌に苦しめられている夫は、母親を恐れているし、女性を恐れている。もちろん、自分が心の底で女性を恐れているとは気がついていない。まさか自分が女性恐怖症だなどとは思ってもみない。自分は女性恐怖症とは無縁だと思っている。
 
怒る者は恐れているという。深刻な不機嫌に苦しめられている彼は、女性を恐れている。彼は女性を恐れ、女性に依存し、それ故に女性を怒っている。しかし、女性を恐れ、女性に依存している故に、その怒りを意識できない。怒りは表現されることなく内向する。その出口を失った怒りの感情が不機嫌であろう。

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