30. “不機嫌”の陰に隠されているものは何か(『まじめさが報われるための心理学』)

『まじめさが報われるための心理学』より

夫の不機嫌に悩む奥さんがよくラジオの『テレフォン人生相談』(ニッポン放送とそのネット局)に電話をかけてくる。「毎日、彼のご機嫌をうかがって疲れてしまった、こちらから喋っていかないと口をきかない」とため息をつく。不機嫌の特徴である「怒りと不満を秘めた沈黙」に悩まされている。「沈黙しているかと思うと、次にはカンシャクをおこす」と奥さんは嘆く。そのくせ夫は「どうも自分がいなくては何もできない」。(中略)
 
彼が不機嫌なのは彼女の責任ではない。彼にどのような態度で接しても彼の不機嫌は変わりない。彼の不機嫌の陰には絶望が隠されている。今までその場その場を取りつくろうことで生きてきて、つけが出てきているだけである。誰が側に来ても、その人とは関係なく彼は不機嫌である。彼の不機嫌の奥に潜む絶望感は、かなり深刻なのである。
 
そしてラジオのテレフォン人生相談に電話をかけてくる奥さんは、確かに夫の不機嫌に悩まされて悲鳴をあげているのであるが、同時にそれ以上に不機嫌に苦しめられているのは、夫本人なのである。この本では、そのような感情を解き明かしてみたい。

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