29. 他人のためにではなく自分のために生きてみる(『自分の居場所をつくる心理学』)

『自分の居場所をつくる心理学』より

自我アイデンティティが出来てくるということは、自分の好きなことか出来てくると)うことでもある。人のために何かをするのではなく、自分がしたいから自分がする、ただそれだ圧のことでなにかをする。これは人を喜ばすために何かをするというのとは全く違う。人を喜ばすためにだけ何かをして生きてきた人は、喜ばす人がいなくなるとどうしていいか分からなくなる。寂しくなってしまう。役割喪失である。
 
娘のために生きてきたという母親が、娘がお嫁に行くとうつ病になることがある。娘を喜ばすためにだけ生きてきたのである。自分のために何かをするということができなくなっている。
 
うつ病の契機になるのは喜ばす人がいなくなることといってもいい。自分が何かをしていることの意味が、人が喜んでくれる、人が見てくれる、そのようなことと関係なくなったとき、自我アイデンティティが出来てきたということであろう。
 
たとえば誰も聞いてくれなくても、自分が一人でバイオリンを弾い了いることで嬉しい、誰もすごいと誉めてくれなくても、一人でおしゃれをして楽しめる。おしゃれをすること自体が楽しい、おしゃれをしていると気分がいい。図書館で一人で静かに本を読んでいるだけで楽しい。そのことが自分の役割に何の助けにならなくても楽しい。そのような自我アイデンティティがあれば役割を喪失したといって発病することもない。

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