1. 人生にはある程度の困難があった方がよい(「ねばり」と「もろさ」の心理学)

『「ねばり」と「もろさ」の心理学―逆境に強い人、弱い人』より

よく「あいつはひよわ」だとか、「あいつは雑草のように強い」とかいう言い方をする。エリートコースを通って来たサラリーマンなどを表してよく「ひよわ」だという言い方をする。挫析に弱いのである。一度失敗するともう立ち直れない。

エリートコースを通って来たサラリーマンは些細な失敗でやる気をなくす。十分に取り返せる失敗なのに「俺はもう駄目だ」と落ち込む。少しのハンディでもやる気をなくす。

success onlyできた人は社内で少し出世のコースからはずれただけで物凄い心理的打撃を受ける。絶望する。少し自分が不利になるともうどうしていいか分からなくなる。ハンディを乗り越える気迫がない。

人間というのは迎合しなければ生きていかれない様な厳しく不快な環境に育っても無気力になるし、かと言って困難のない甘やかざれた環境で生きても無気力になる。ある程度困難と戦っていた方が長生きもすると言う。依存性を誘発されるような環境に生きる老人は衰えも早いということである。何もかもしてくれる養老院は望ましくないという。

私は先の文章でglosse overという言葉に魅かれた。ごまかして生きることがどれほど心理的に害になるかということである。「酸っぱい葡萄」や「甘いレモン」はその人をその場で表面的には救うかも知れないが、長い目で見ればその人を絶望的にしていくのである。

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