48. 失敗から学ぶ姿勢が人間を大きくする(『まじめさが報われるための心理学』)
何かで失敗したときに、まず「よかった」と思うことである。その失敗はあくまでも小さな戦闘の敗退に過ぎない。その失敗から学ぶことがなければ大きな戦争に負けたかもしれないのである。そしてその失敗を後から考えて「よかった!」ことにするかどうかはその失敗に対するその人の態度である。
過程を大切にする心理にとって、人生に失敗はない。すべての失敗は成功への過程である。次に同じ失敗をしないための財産である。ここで失敗をしたおかげで、もっと重要な時期に失敗しないで済んだと解釈する。大切なのは失敗の中にある肯定的な面に注意を向けることである。そして活動を続けることである。
すでに失敗してしまったのに、それにさからっている人がいる。「なんで失敗したのだ」と怒り嘆いている。失敗したという事実にさからったがために失敗を物凄いことにしてしまうのである。「さからった瞬間、トラブルは巨大な敵になってしまう」。
あるビジネスマンが重要な会合を前にして病気になってしまった。重要な人から夕食に招かれていたのである。普通のビジネスマンなら「何でこんな重要なときに病気になるのだ」と嘆いて悔しがるところである。しかしそのビジネスマンは病気の中で考えた。「この病気を何とか利用できないか?」。
そこで彼は食事の最初にだけ顔を出すことにした。「病気でも来た」。これが相手にアピールするのではないかと考えたのである。そして彼は熱をおして出かけていって、顔だけ出して帰った。
それが相手にどう感じ取られたかは分からない。しかしとにかく重要なのは彼の「この病気を利用しよう」という姿勢である。
まじめさが報われるための心理学 (PHP文庫)
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加藤 諦三 PHP研究所 2002-10