40. “あるべき姿”とらわれると自由な発想ができない(『まじめさが報われるための心理学』)

『まじめさが報われるための心理学』より

人間の心理的能力とは、精神力プラス自分の精神力の理解度である。無力性性格者でも、自分が無力性性格の傾向が強いと気がついている人は強い。自分の居場所を間違えないし、神経症的なエネルギーの使い方がない。つまり、自分のあるべき姿にばかり気をとられて、その非現実な目標に向かって無駄なエネルギーを使い、結局、何事も成し得ないという人にはならない。
 
そして何よりも心理的に落ち着いている。そして神経症者と違って人とつき合える。その点で精神力プラスその理解度が人間の心理的能力となる。
 
一方、神経症者は現実を見ないで、先ずあるべき姿を設定する。自分はこうあるべきだという決めつけである。他人はこうあるべきだという決めつけである。人生はこうあるべきだという決めつけである。遊びはこうあるべきだという決めつけである。家族はこうあるべきだという決めつけである。友人はこうあるべきだという決めつけである。妻はこうあるべきだという決めつけである。夫はこうあるべきだという決めつけである。兄弟はこうあるべきだという決めつけである。先ず初めに決めつけありき。ーーこれが神経症者の特徴である。
 
自分はこうあるべきだというとき、現実の自分を見てはいない。自分は無力性性格者的なところがたぶんにある。それであるなら、そのような自分が生きていくのにはどのような生き方が賢明かという発想ではない。

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