近所どうしのカエル
二ひきのカエルが、近所どうしに住んでいました。1ぴきは道からはなれた深い沼に住み、1ぴきは道に沿った水たまりに住んでいました。さて、その沼にいるほうのカエルは、もう1ぴきのカエルに、自分のところにくれば、もっといい安全な生活ができるといってすすめましたが、そのカエルは、なれている場所からはなれるのはいやだといってききませんでした。そうしているうちに、そこを車が通りかかって、そのカエルをつぶしてしまいました。
このカエルは信じられる人がいないのである。そしてどう動いて良いかの方法が分からない。
もう一つ、カエルには欲しいものがない。カエルに美味しい食べ物があれば、カエルは動く。
人は生まれながらにして幸せになることを約束されていると考えたら、多くの思想家から怒られるだろうか。その約束が果たされる条件は自分に素直になることだと私は思っている。
素直さとは自分に正直に生きることである。幸せになると言う約束が果たされる条件とは正直に自分に向き合い真実を見つけることであり、偽りをすてる強さをもつことである。
人はいったん自分を飾りを付け出すと、それをすてるのは辛い。
それは怠惰な生活で身についたしまった贅肉をそぎ落とす苦しさと同じである。健康で長生きをするには苦しくても贅肉を落とす努力をしなくてはならない。それとおなじように幸せになるには今までの生き方を切り替えることである。
「安らぎ」のある生き方、ふれあいのある人生を送るには勇気をもって虚飾の生活、偽善の生き方をたちきることである。しかし、わかっていながら自ら煩わしさから逃げようとする。
先日テレビを見ていたら、億ションが売れているという。そしてそれを買う人達は情報産業に勤める若い人々だと言う。中には前の会社から引き抜かれるときに億ションを買ってもらった若い人もいるという。
不動産やさん自身が、億ションを買う人が今までのイメージの人と違うと驚いている。
それを見ていて、私は「この人達は将来おそらく惨めになるのではないか、この人達の人生は狂うのではないか」と思った。つまり皆その若い人達は「今の状態が続く」と思っている。カエルは今の状態が続くと思っている。明日にはひかれると思っていない。今日ひかれないから明日もひかれないと思っている。だから安全な場所に引っ越さない。しかし今の状態は続かない。
本物のビジネスマンなら億ションなど買わないで、そのお金を貯めて他に使うと私は思ったのである。若い内にこんなマンションに住めば人生を安易に考える。そうして人間関係がこわれていく。トラブルを起こしていく。
おそらくそのテレビを見ている中にはリストラされた中高年の人達も居たろう。おそらく彼らが溜息をついたか自分の不遇を嘆いたかは知らない。
しかしそのリストラされた中高年だって、もし大企業にいたときに「今の状態は続かない」と思い、人生の計画をきちんと立てて、自分を磨いていればリストラされて苦労をしなかったかも知れないのである。
若いのにいい気になって億ションを買うような計画性のなさが二十年後にリストラされた中高年と同じ立場に追い込まれているかも知れないのである。
目に見える得は毒。なぜならそれで自分の立場が分からなくなるからである。
逆に今の苦労は頑張っていれば後で生きる。情報産業に入れなくて、苦労している若い人もいるかも知れない。今は雑用ばかりしているようだけど、いつかその苦労が果実となって自分にかえってくる。
人はなぜ動かないのだろうか。
それは今自分のいる位置が分かっていないからである。全体が見えていないからである。今自分がいる場所は地雷のある場所だと分かれば動くかも知れない。
慣れた場所を離れるのがイヤだと言うこと自体が悪いのではない。その位置を分かっていないことが問題なのである。
今日明日気楽に食べて行かれれば、それで良いと思う。そしてその位置を知らなければ動かない。
大切なのは自分の今いる位置を正しく知ることである。
人のアドヴァイスで動かない人の中にはあまりにも裏切られた体験が多すぎるのである。いつも騙されている人は動かない。
右に行けばお花畑がありますよとぴわれて、お金払って右に行ったらなかった。左に行けばメダカが泳いでいますよと言われて行ったらメダカが泳いでいなかった。