【年頭所感】(2024年)

このたびの令和6年能登半島地震でお亡くなりになられた方々に、謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々、そのご親族、関係者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。
被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

新しい年が、世界が幸せな年のスタートであることを願っています。
人類は今課題に溢れています。

快適な生活は人の心理に何をもたらしたか?
所得は増えるし、価値観は自由になるし、技術は進歩するけど人びとが幸せになっているわけではない。
事実この間に所得は増え、先端科学技術は進歩し、人々は様々な恩恵をこうむったであろうが、
ギャラップの調査をみる限り、人びとはより幸せになっているわけではない。

性加害問題、パワー・ハラスメントからカストマーハラスメントをはじめとする様々なハラスメント問題、統一教会問題、闇バイトから特殊詐欺問題、大学の運動部の薬物問題、虐め問題などなど、
2023年の日本の問題の根底にあるのは、心の問題であり、「隠された怒り」である。

神経症予防のためにあらゆる困難を取り払っても意味がないとフランクルは言う。

「なんのための豊かさか?」とリースマンは言う。

残念ながらフランクルやリースマンの言う通りである。

私たちは、本当に進歩したのか?何処で生き方を間違えたのか。
ギャラップ調査を見ると、これから人々の生活は良くなると多くの人は思っている。
でも、Inner happiness, peace of mindは悪くなると多くの人は思っている。

要するに現実の苦しみは解決に向かっている。
しかし心の苦しみはいよいよ深刻になると言うのが、多くの人びとの率直な予想である。
だからこそ今、心の学問をすることが必要なのである。

恐ろしいことに、生活が便利になればなるほど深い喜びはなくなる。
私たちは便利で快適な毎日をすごすが、自らの足もとに実感としての当たり前の感情に支えられた立脚点がない。
そこにInner Happinessは悪くなると多くの人が予感する原因があるのだろう。

人類は月にいけるようになっても、洞穴に住んでいる時よりも、幸せにはなった訳ではない。

なぜ人々は、これからより健康になり、生活がより良くなるのに、将来「心の安らぎ」がないと思っているのか?
なぜ人間としての「内なる幸せ」はないと思っているのか?
なぜ人間としてのモラルの問題は悪化していくと思っているのか?

ギャラップ調査を見る。
人々の生活は良くなると多くの人は思っている。
でも、Inner happiness, peace of mindは悪くなると多くの人は思っている。
要するに現実の苦しみは解決に向かっている。
しかし心の苦しみはいよいよ深刻になると言うのが、多くの人びとの率直な予想である。
だからこそ今、心の学問することが必要なのである。

ますます超高速の新幹線だの飛行機等で世界は狭くなった。月まで住めることを予想しはじめている。
それにもかかわらず、自分の居場所「=自分と言う存在を確実に感じられる場所、心の平和を見いだす場所」が何処にもない。
そこに「Peace of Mindは悪くなる」と多くの人々は予感しているのではないか。
人間は自分が非社会化していく不安を感じている。
私たちは、自然と人間から切り離された心の異邦人になっていくと多くの人は思っている。
今年は、心の学問の必要性が痛切に感じる歳である。

心の基準を作ることなしに進めば、先端科学技術進歩は人の心を壊す。
人は肉体的危害になる技術には厳しいが、心に危害を加える技術には気がつかない。


核兵器が人類を滅ぼす可能性より、先端科学が、社会を変えて人の心を変えることによって間接的に人類を滅ぼす可能性の方が大きい。
そのことをはっきりと示したのが、2023年であった。

個人的期待として2003年はよりよくなるか、同じか、悪くなるかと言う質問に63カ国の国際比較がある。
「註、 Volume ⅩⅩⅤⅠⅠ  Issue 6  June 2003, World Opinion Update, pp.7-71」
63カ国中最低が日本。
しかもダントツに低い。
日本以外はどの国もBetterと応えた人は二桁。日本だけが一桁の9%。
ダントツに低いと言うよりも日本は例外と考えた方が良いかもしれない。

今年は世界の全ての人が活力に満ちて、本当の意味で満足感のある人生を送れることを願っています。

今年も体力の続く限り書き続け、講義を続け、ラジオを続けます。
今年もよろしくご指導ください。

加藤諦三

(その他の年の「年頭所感」はこちら)