アメリカの家庭は失敗しているか?

日本には離婚が少ないのに、アメリカは離婚が多い。この話しはよく聞く。だからアメリカの家庭は失敗しているし、アメリカの社会は失敗しているし、日本人の家庭観、社会観のほうが正しい、と続く。確かにアメリカは日本に比べて離婚が多い。子供が学校から帰ってくると母親がいる、父親は外でパンを稼いでいるというように恵まれた子育て環境で育つ子供はアメリカでは20%であるという。
 
しかしアメリカでは異質な人々の出会いによる結婚の方が離婚が多い。もちろん同質な人の結婚に比べてということである。異質な背景を持ちながら二人が仲良く結婚生活している人ももちろん沢山いる。
 
アメリカの心理学の教科書に「調査によればHomogamyの方が Heterogamyより成功している」と書かれて、その節に囲みの記事が載っている。そこには「類は友を呼ぶ」という格言の方が「反対は魅力」という格言よりも結婚相手を選ぶときには有効であると書かれている。価値観、社会経済環境、宗教、年齢、人種等などである。
 
たしかに具体的に結婚生活が始まれば、例えば休日をどう考えるかという価値観はそれぞれのグループによって違う。誕生日のお祝をどうするか、食べ残りをどうするか等などがそれぞれのグループの価値観で違ってくる。日本は同質社会だから、自分の意見をどういうかまで同じ様に育てられている。「離婚はしない、殺人は毎日」と言うような激しい喧嘩をしながら平気で一緒に生活しているというカップルは少ない。
 
人種のるつぼといわれるアメリカ社会と違い、日本は同質社会だから離婚が少ない。ただそれだけのことではないか。つまり人が親しくなっていく過程で、価値観や、役割が問題になる時に、別れが生じるが、同質の背景をもった人々の間ではこれが少ない。
 
日本はたまたま海に囲まれた同質社会である。アメリカは異質社会である。私達は、環境を自分たちの資質と考えるから、自分たちが心理的に幼稚だという反省がない。この心理的成長の失敗が、私には、苛めから住専問題までの日本の混乱の基本のところにあるように思えてならない。
 
そして逆に、離婚の少ない同質社会の脆さが国際社会のなかで、与えられた役割を果たそうとするときに表われてくる。今の日本人に最も大切な反省は私達の心理的幼稚さである。心理的成長が日本の教育の最大の目標になって欲しい。