加藤諦三の言葉 第29回 [2001/05/14]

マイナスの言葉よりプラスの言葉を伝えよう
人を動かすための手っ取り早くて確実な方法  (P.275)
(PHP研究所)

 近くにいればいるほど、その人の自己イメージに対する、したがって幸福に対するあなたの責任は大きい。相手の自信に必要な支持と励ましをあたえられる位置にいるのだから。
 その意味で、こういう支持や励ましをめったに言葉にしないのは残念である。近しい人間のあいだでは、すべてわかりあっていると思っている。「彼(彼女)は私の気持ちを知っている。わかりきったことを口に出さなくたって」と。だが、そのわかりきったことが時の経過のうちに曖昧になるのだ。愛情をこめた言葉はだんだん減り、ほめ言葉もたまにしか口にせず、謝るのも余計なことに思えてくる。「わかっているのだから」と。
 ところが否定的な事柄だと別だ。小言や批判は減らない。これは〔リアルな〕情報を伝えるものだから、ちゃんと指摘しなけれぱならない。事実、こういうコミュニケーションがオープンで正直な関係の証明だと誤って考える場合がしぱしばある。
 結果としていつのまにか不均衡ができる。プラスの意見や気持ちは余計なことというわけで伝えられず、マイナスの意見や気持ちは大切な情報だからと伝えられる。自己イメージはだいたい外からのフィードバックに左右されるので、いきおい肯定的イメージが疑問にさらされやすくなる。逆の情報が入ってこないのだから。
 このことは日本の親が子供を育てるときに大切である。日本の親は子供を励まさない。その代わり子供の欠点を見つけては子供を批判する。その結果、子供の自己イメージは悪くなる。



勇気こそ、君よ、これこそ男をも女をもいと美しく見せしむ −−テニスン
青い鳥を探しすぎる心理  (P.31)
(PHP研究所)

 アメリカの表現で「take a risk」あるいは「get involved」の意味を「stick your neck out」と言うのがある。危険を恐れるな、勇気を出せ、という意味である。堅い甲羅の中に首を隠しているときには亀は止まっている。
 自信と勇気を持てば人間は力を発揮する。首を突き出すことで不安が消える。どんなに失敗したように見えても「あの人には誠意がある、生きざまがよい」という生き方がある。首を突き出して生きるとは、失敗を恐れず勇気をもって生きることである。
 どんなに美人でもずるい女は汚らしい。しなをつくって男を誘うような女は汚らわしい。勇気のある女は逃げない女である。勇気のある女は輝いている。



頭で考えているだけではなかなか賢くなれない
青い鳥を探しすぎる心理  (P.32)
(PHP研究所)

 これは「若いうちに人生経験をしろ」という意味にとることがいいだろう。若いうちに失敗を含めて色々な人生経験をすることである。それは賢くなることと失敗することがイコールであることが多いからである。失敗は辛いけれども貴重な人生経験である。若いうちに百失敗すれば、それだけ人生の幅が広くなる。人は頭で考えているだけではなかなか賢くなれない。
 よく「家は三回建て直すと、便い易くなる」という。一生で最も大きな買い物をするから人は考えに考える。しかし建てる前にどんなに頭で考えても、やはり実際に使ってみないとわからないことがたくさんある。実際に使ってみると「ああ、こうなっていればなあ」というところが出てくる。頭ではどんなに考えても限界がある。ただ、失敗しても賢くなれない人もいる。そのときに初めて失敗は失敗になる。失敗しても賢くなれないのは失敗したときに「自分はなぜ失敗したのか?」と反省しないからである。
 もともと人生には失敗はない。失敗を失敗にしてしまうのは、その人の生きる態度である。
 私は失敗をして苦労しているときには、「この苦労で自分は賢くなれる」と自分に言い聞かせている。頭で考えて偉そうな理屈を言っていても、薄っぺらにしか映らない。物事は頭で考えた理屈では動かない。


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