加藤諦三の言葉 第20回 [2001/02/09]

献身的な人の弱さ
自分を活かす心理学 (P.87)
(PHP研究所)

 まずあなたのやることは、自分を見下すことをやめることである。自分の理想像を捨てることである。なぜなら他人から何かを頼まれて断れないあなたの理想像は、あなたの無価値感と深く結びついているがらである。
 自己の理想像、言葉としては立派である。高い規範、言葉としては立派である。すべての人に献身し、文句も言わずコツコツと働き、自分のことはあとまわしにしてまず他人のことを優先する。たしかに立派である。しかしこれらのことがその人の自己無価値感の裏返しでしがないとしたら、どうであろうか。
 それらのことが本人にとっても杜会にとっても望ましいのは、自分を軽蔑し、自分は他人からの立派な扱いに値しないという自己無価値感の裏返しでない時である。
 それらが本人にとっても社会にとっても望ましいのは、自分を軽蔑しない人々と、他人を利用して甘い汁を吸おうとしない人々との関係においてのみである。
 人は自分に自信がないがらスーパーマンのようになろうとするのである。自分に失望しているがら全能の人間になろうとしているだけである。あなたは尊敬されよう、尊敬されようと努力すれば努力するほど、いよいよ見下されるだけである。
 利己的でずうずうしい人間は、ちやんとあなたの心の中の弱さを見抜いている。極端に言えば、あなたは彼らにとって人間ではない。奴隷なのである。奴隷の中にもよく働く奴隷もいれば役に立たない奴隷もいる。あなたは役に立つ奴隷でしかないのである。



自分を犠牲にしてまで他人に好かれようとするな
自分を活かす心理学 (P.127)
(PHP研究所)

 人はなぜそんなに他人がら嫌われることが怖いのであろうが。神経症者はなぜそんなにまで他人に好がれようとするのであろうが。
 それはやはり小さい頃、親がら愛された体験を持たながったからではないだろうが。小さい頃甘えの欲求が満たされていれば、そんなにまでして他人に好がれる心理的必要はないはずである。
 カレン・ホルナイは、心の葛藤の解決の仕方で人を三つの類型に分けている。その一つに従順型というのがある。このタイプは、相手が自分に対してどのような態度をとってもその人に好かれようとするという。
 自分が恋した人に好かれようとが、自分が尊敬している人に好かれようとがいうのなら分かるが、自分が好きでもない人にまで好かれようとする人がいる。自分のことを無視する人にまで好かれようとする人もいる。なかには自分のことを軽んしる人にまで迎合する人もいる。
 普通なら怒っても当然という人に対してまで卑屈に迎合するのである。これらの人はやはり愛情飢餓感の強い人であろう。
 こういう人に「自分を大切にしよう」と言っても無理である。大切にすべき自分が独り立ちできないのである。



自分を守るために他人から好かれようとする人
自分を活かす心理学 (P.131)
(PHP研究所)

 愛情飢餓感を持つ人は心が不安である。自分との関係においても他人との関係においても不安である。
 他人から好かれようとするのは、好かれることで自分を守ろうとしているのである。十分に愛されなかった人は、この世の中に自分の居場所がないように感じている。彼にはこの世の中に自分が安心していられる場所がないのである。したがってどこにいても自分を守らなければならない。
 心の健康な人、小さい頃十分に愛された人にとっては、そのような人は一体何から自分を守ろうとしているのか分からない、と言うかもしれない。
 その疑問はもっともである。心の健康な人はこの世の中で生きることが怖くないからである。いつもビクビクしている人がいる。怖いのである。心の健康な人はなぜ怖いのか分からないであろう。それは小さい頃ビクビクする必要がなかったからである。
 小さい頃の人間は一人では生きられない。生きるためには他人の好意を必要とする。その好意を得られないで生きてきた人がいる。いつも拒絶の恐怖に脅えて生きてきた人がいる。拒絶されれば死んでしまうのである。
 死んでしまうという恐れを味わった人と味わっていない人とでは、決定的に生きることに対する理解が違う。動物園ではなくジャングルで夜、猛獣の叫びにふるえているところを想像してみることである。あるいはジャングルの中に迷い込んで、猛毒の蛇があっちからも、こっちからもペロペロと舌を出しているところを想像してみることである。
 死んでしまうという恐れは、こんな時の恐怖なのである。そして小さい頃自分が拒絶されることを恐れているということは、このような体験をしているということなのである。


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