加藤諦三の言葉 第192回 [2004/11/11]

  ホモ・ファーベルとホモ・パチエンス
『苦しくても意味のある人生』(p.16−p.17)
(大和書房)

 フランクルは一九〇五年にウィーンに生まれた神経医学者である。彼は自らの著作の中で人間を三つに分けた。 ひとつはホモ・ファーベル(働く人間)で、成功をめざす人である。成功と失敗の範疇でしか、ものを考えられない人である。 次にはホモ・アマンス(愛する人間)である。それは体験し、出会い、そして愛しつつ自分の人生を意味で充たす人である。 最後にホモ・パチエンス(苦悩する人間)である。体験によって自分の人生に意味を与えられないときでも、なお人生に意味を与えることができるとフランクルは言う。自分の運命にどのような態度をとるかということで、その人の価値は決まる。つまり、「いかに彼がその運命的に避けられない苦悩をいわばその十字架として荷うかという仕方において」人生に意味を与えられるという。
 彼にとって大切なのは、成功-――失敗の軸ではなく、充足――絶望(=実存的欲求不満)の軸である。彼は、もっともはなはだしい失敗においても自らの生を充足できると言う。
 「真の運命を率直に受けとって苦悩することの中に意味及び自己充足の最後の、しかも最大のチャンスが人間に開かれる」とも言っている。
 私たち日本人は、この「苦悩する人間」の視点を失ったことで、失敗した人を「負け組」として簡単に片づけるようになった。彼らを不幸な敗残者と考えるようになった。まるで人間としての価値までないかのごとくに。
 私たちが陥っているこの人間観の狭さこそ、今の日本の大問題である。毎日の生活をしている視点がこのような狭い視点なのである。


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