32. 本当に嫌いなのは自分自身という悲劇(『まじめさが報われるための心理学』)

『まじめさが報われるための心理学』より

自分が自分を憎んでいるということは、人間にとって悲劇である。それは孤独をもたらす。自分を憎んでしまった人の人生は淋しい。自分を憎んでしまった人は、抑圧と投影と相手との同一視という心理過程を通して、近い人を自分の分身にしてしまう。そして自分が自分を嫌いなのだから、自分に近い人達は皆嫌いな人になってしまう。ドンファンなどというのは、外からみると一見もてて幸せそうであるが、心の中は不幸な人たちなのであろう。
 
もちろん、多くの不幸な人たちは、この心理過程に気づいていない。先ず、自分が自分を憎んでいる、自分が自分に敵意を持っているということに気がついていない。したがって、当然その敵意を相手に向けているということに気がついていない。相手に敵意を持ってしまうのは、相手が自分の分身だからであるということに気がついていない。(中略)
 
つまり、そのような人は、日頃実際の自分に対して過度に批判的になっているのである。実際の自分をひどく責めているのである。実際の自分を許していない。

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