[年頭所感] 2019年
年頭にあたり思うこと。
昨年からの深刻な世界の分裂への方向性が今年は、向きを変える兆しが見えることを願っています。
若い頃、マルクスの経済学哲学草稿を読んで、これは人生論であると考えました。米中関係を、今のように貿易戦争とか冷戦とかいうような視座ではなく、人類の救済という視座で見なおし、世界新秩序への過程と見ることは可能です。
45年前、ハーバード大学で、今はなきダニエル・ベルのゼミに出ていました。彼が「イデオロギーの終焉」を書いてから半世紀以上が経ちました。
お金という視点で「良き人生」を考える人は常に自己評価が低いし、活力がないし、人生の満足感がない。「註、Bruno S. Frey、 Happiness :A Revolution in Economics, MIT Press、2008、P.7」。
また、それ以上に世界の歴史を見誤る。
今年は世界の全ての人が活力に満ちて、本当の意味で満足感のある人生を送れる様な時代に向かって進み出すことを願っています。
その鍵は新共同体論によるナルシシズムの超克の可能性が鍵です。
新年にあたり、それを生み出せる、フロイドを超える偉大な思想家の誕生と、それを理解し実現する、リンカーンを超える偉大な政治家の誕生を願い祈っています。
想像するほど不可能なことではありません。幸せな人の共通性は、適切な目的、楽観主義、良い人間関係です。「註、Michel Argyle, The Psychology of Happiness, Methuen & Co.LTD London & New York, 1987. p.124」。国家も同じです、不適切な目的を持たなければ良い。
今は人類の救済と経済的繁栄が本末転倒の時代です。それを直すことは不可能ではありません。
人類が生存の問題を抱えながら、実存の時代にはいったことを認識していない世界の指導者があまにも多すぎます。
歴史がどちらの方向へ進むのか、これからの半世紀は人類の岐路の時代だと思っています。
年末年始に3冊の著作を出版しました。今年も体力の続く限り書き続け、講義を続け、ラジオを続けます。
加藤諦三