心理的健康について 第30回 [2001/07/23]

第7章 神経症者の要求の特徴4(2)

 神経症になればなるほど自分の出来ないことをしようと焦るのは、神経症的になればなるほど、虚しいから、それを名誉やお金で埋めようとしているからである。虚しさが深刻なら深刻なほど、その大きな穴を埋めるのに大きな名誉と大金が必要になる。
 従って神経症者は失敗を受け入れることが出来ない。受け入れることが出来ないとは、失敗すると失敗を嘆いてばかり居ると言うことである。心理的に健康な人は自分のしたいことをして失敗するから、失敗してもしたことに対する満足はある。失敗に対する態度でその人の神経症の程度は分かる。神経症者は自分を大切にした生き方をしていないから、失敗したら後悔だけの人生である。
 そして成功しても幸せになれない人である。なぜなら何事も自分の意志でしているのでないから。成功しても達成感、満足感がない。
 心理的に健康な子供が木に登ろうとする。自分が登りたいから登ろうとしている。失敗する。すると「なぜだろう?」と思う。もう一度挑戦する。自分が納得するまで登る。神経症の子供が木に登る。自分が登りたいわけではない。しなければいけないからするだけである。登れなかった。すると登れなかったかった自分に対する絶望と後悔が残る。
 理想像への執着は人生の白アリみたいなものである。白アリは長い間に家を壊す。

 神経症者は不安である。その自分の不安から名誉やお金によって逃れようとする。お金や名誉を誇示することで自信のなさから逃れようとする。だから名誉やお金に強迫的になるのである。名誉やお金がなくては居ても立っても居られない。それが名誉やお金に「強迫的」と言うことである。

 彼らは誰も人を信じていないから名誉やお金が必要なのである。自分を守るものとしてお金や名誉しか信じられないのである。
 お金も名誉もなくてもあの人は私を愛してくれると信じられれば、人はお金や名誉に強迫的にならない。お金も名誉もなくてもあの人は私を見捨てないと信じられれば、人はお金や名誉に強迫的にならない。神経症型の人は人を信じていないから、お金や名誉がなければ人と堂々と会えない。



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加藤諦三、加藤諦三研究室