今回から「心理的健康と解釈」について書いてみたい。ある年の新入社員の話である。その人は広告代理店に入社した。彼は入社第一日目から広告を取りに出されたという。もちろん広告は取れなかった。学生時代に部活動をして何かのパンフレットを作り、そこに大学の近所のお店の広告を取りに回ったと言う学生時代を過ごした人もいるだろうが、多くの人にとっては広告を取るという仕事は学生時代に経験していない。だからうまくいかなくて当たり前なのである。
彼は自分が広告を取れなかったということをどう解釈し始めたか。次のように解釈した。自分は見知らぬ人と話すのが苦手である、自分は無口な方だ、だから自分はこの会社には向いていないのではないか、会社が向いていない自分の人生はおしまいだ、そう解釈して彼は出社二日目にして山手線に飛び込んでしまった。
この自殺の原因を広告が取れなかったと言うところに求めるのはどうだろうか。というのはその年のその広告代理店の新入社員は九人であった。そして全員初日には広告が取れなかった。しかし皆はそうした行為に出なかった。つまり自殺の原因は失敗と言う事実よりも失敗に対する解釈である。