第4節 き真面目な人の挫折
夫に女性がいるのに「夫と別れたくない一心」の四十二才の奥さん。一年前から夫に女性がいるということは分かっていた。夫から「離婚してくれ」と頼まれた。「主人はその女性を愛してしまっている、私には手がつけられない。」と嘆く。愛人は二年前からの部下である。愛人も会社で夫の後輩と結婚している。三十才ぐらい。「家にも一度来ました」。
売り言葉に買い言葉で、苦しいときには「離婚する」と言う。夫は土曜日の日に愛人に会いに行く。朝八時半くらいにそわそわして出かけて行く。愛人は子供を幼稚園に送って行って、その後いつもの場所であっているらしい。
「先日母が急死したときに、金曜日に意識を失って土曜日の日に葬式だった」。そこで彼女は夫に午前中実家に来て欲しいと頼んだ。しかし夫は会社に書類を取りに行かなければということでいけないと言う。「書類はその日でなくてもいいではないか」と頼んだけれども駄目だった。その足で来ると言うことだったが、実家に十二時まで来なかった。
翌日実家に行くのに車が必要で、鍵がないので主人の洋服のポケットを捜した。すると土曜日のモーテルのレシートと手紙が出てきた。愛人からの手紙には、主人以外にはほかの男性は考えられないと書いてあった。
「去年あたりは酷かったが、まだ未練があったが、これで私も決心しました。このことで耐えられなくなった」と言う。
「私はこの家にいると言うだけでほかに何もない」と淋しそうに言う。夫は子供とも会話なし、妻とも会話なし。朝も食事してさっと行ってしまう。「この愛人問題が分かったら会社を辞める覚悟はできている」と夫は言う。
「今まではこの様なことはなかったのですか?」と聞くと女性問題など起こすとは全く考えられないき生真面目人間だったと言う。「とにかく真面目で、真面目で四角四面でかたぶつで」。彼は今まで自分を守るために真面目であった。この様に防衛的性格としての真面目な男性が四十代を過ぎて恋に迷うとコントロールが効かない。
夫は自分でも頭がおかしいと言っている。「家庭を捨てて、どうかしている」と言いながらどうしようもない。「昔の真面目なおとーさんに戻ってくれ」と彼女は頼む。しかし夫は「もう嫌だ、今が面白くてしかたない」。女にとって都合の良すぎる男、度を越して真面目な男は、どこかで事件を起こす。