人を育てる 第75回 [2004/06/03]

 少年は親が嫌いだった。

 2000年6月に岡山県の17歳の少年による野球部員と母親の殴打事件が起きた。
 つまり後輩の野球部員を金属バットで殴打し、そのあと自宅に戻り母親を殺した。
 その少年について「真面目だ、真面目だ」と騒がれている。たとえば「口数は少ないけど、すごくいい人です。毎
日朝一番に学校に来て、強制されてもいないのに、窓を開けて空気の入れ換えをしてくれていました。」「週間文春
、2000/7/6」。
 おそらくこの少年も高校を卒業してしばらくすれば、自分は先生も同級生も嫌いだったと気がつくだろう。
 家庭でも問題はなかったと周囲には見えた様だ。「親子3人で一緒に農作業をしたり、本当に仲睦まじい家庭でし
た」「週間文春、2000/7/6」。
 おそらく少年は親が嫌いだったのである。一緒に働きたくなかった。
 この子は家が嫌いだったに違いない。そして畑仕事も嫌いだったに違いない。やるべきことをしているという心理
だったのではないか。
 この子は淋しいから、親の愛を求めて、親を喜ばそうと家の手伝いをしたのだろう。
 遊びたい気持ちを抑えて家の手伝いをする。嫌だけれども嬉しそうに草むしりをする。
 おそらくこの少年は母親を嫌いだったに違いない。憎んでいたに違いない。友達を殴る前から母親を殺すつもりで
あったろう。しかし母親にそんな悪い子と思われたくない。
 殺すくらい憎くても「良い子」と思ってもらいたいのである。殺すときに母親に顔を見られたくない。そうなれば
寝ているところを殺す。




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加藤諦三、加藤諦三研究室